■ 得意技あれこれ
自分の専門の楽器を弾くのは商売であって、特技でもなんでもないが、神戸市室内合奏団のような比較的小規模の団体では専門外のことも時にはやらなければならない。
おもちゃのシンフォニー。これは水笛、カッコー笛、ガラガラ、トライアングル、ラッパ、太鼓などが登場する。カッコー笛はなかなか音程が定まらず難しい。ヴィォラのE嬢はなかなかの名手である。
そのほかには線路を叩いたり、鉄琴、シロフォン、木魚、あげくのはてはタイプライターをやったり口でシャンパンの音を模したり・・・・・・。
一番すばらしいのはチェロのT君の「わんわん」である。「ワルツィング・キャット」という曲の終わりに犬がほえるところがあるが、かつてT君以外の男たちが一計を案じ、みんなで「わんわん」と言うふりをして「彼1人」にやらせようということになった。T君は見事にひっかかったのだが、そのときの「わんわん」があまりに素晴らしかったことから、それ以来「わんわん」の部分は「ソロ」になってしまった。もちろんソリストはT君である。
■ 「運命?」はたまた「田園?」
通常、指揮者が出てきてお辞儀をし、楽団員の方を向いたとき、どんな感じの曲が、どんな雰囲気で始まるかは、想像がつくものである。
ヴェートーヴェンの代表作である交響曲第5番の「運命」と、同じく第6番の「田園」とは、その始まりが好対照なので、指揮者の雰囲気でどっちが始まるのかはわかるものである。実際、かつてロリン・マゼールが「田園」「運命」の順番を勘違いして、ものすごいコワイ顔つきをしてオケメンの方を向いたので、コンサートマスターが「あのー・・田園からですけど・・・・」といったら、やはり勘違いしていたという話しがある。
ところが、わが国最長老だったA先生。この先生はもちろん偉大な方であるが、オケメン(オーケストラのメンバーのこと)からは分かりにくい棒というか、いつも雰囲気が同じという方でもあった。A先生はいつもコワイ顔をして、いかつい振り方をするので、オケメンはお互いに「田園からだよネ?」と確認してから、曲を始めた。あとでコンサートマスターの某氏が「困った先生だ!世界広しといえども、「田園」と「運命」を同じ顔して同じ振り方で始める指揮者がどこにいるよ。」と呆れていた。