■ 指揮者? 今夜3回くらい見たかな???
こうのたまわれたのは私の主宰する某Kチェンバーオーケストラのコンサートミストレス(※1)の1人Y子嬢である。今夜の演奏曲は4曲あったのだ。ということは一度も指揮者を見なかった曲もあるのかな???
一般の人からみると指揮者と楽団員の関係は実に不思議に映るだろう。一番よくわかるたとえで言うと、楽団員はドライバー、指揮者は道路標識及び信号機と考えていただくといい。運転中に信号や標識はなんとなく見はするが、ドライブの途中、そう何度も標識など見る必要はない。ましてや何度も通っている道ならなおさらである。
だから一夜で3回は極端にしても、1曲中で、そう何度も楽団員が見る必要はない。ただし、見たいときはいつでも見れる状態でなくてはいけない。オーケストラのメンバーは楽譜を見るのが忙しい。しかし、必要なときはチョイチョイと指揮棒の方に眼をやっているのだ。
※1 コンサートミストレス
指揮者の次順位にある第一バイオリンの首席奏者を、男性であればコンサートマスターといい、女性であればコンサートミストレスという。
■ 先生、わかりません
おはなしその1で紹介した指揮者のY先生。華麗で音楽的な棒さばきで有名な先生であったが、わかりにくい棒という定説も一方であった。私が属していたKシンフォニーではY先生が元常任指揮者でもあり、密な関係にあったので、先生の棒をみるコツというものを皆よく知っていた。その奥儀というのは、わかりにくいところ、混乱しそうなところは見ないで、オーケストラの方で勝手に音楽を作ってしまうのである。そうすると指揮者はイヤでもそれに付き合わないと仕方がない。何しろ数では1人対80人ぐらいになるのだから。
ところがY交響楽団との合同演奏会のとき、指揮者がY先生だった。忘れもしないボロディンの「ダッタン人のおどり」で途中曲が急に速くなるところで、Y先生お得意の華麗なダンスがはじまった。私たちKシンフィニーの連中はあわてず騒がず「はじまった!はじまった!」と、こちらはこちらでアンサンブル〜♪。
あわてたのはY交響楽団の連中だった。「Kシンフォニーの皆さんはあの棒がわかるんですか?」と不思議な顔をしていた。私たちだって分かるわけがない。先生を無視して勝手にやっていただけなのだ。