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神戸クラシック物語
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  • クラシック入門シリーズ
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■ エンビ服

 私たちオケマンの最高の服装はエンビ服というシッポが長くて二つに別れているモーニングをスマートにしたような服である。いまどき外交官か音楽家くらいしかそんなものを着る人はいないだろうが、このエンビ服、案外に身体が動かしやすくて他の正装服よりも機能的である。但し、普通の洋服屋では売っていないのであつらえなくてはならない。新品だと最低10万円はかかるが、最近は中古のみせもあって、結婚式場の払い下げなのだろうか、3万円以下でエンビ服をおいてくれている店もある。
エンビ服も私たちにとってはいわゆる作業服でしかないので寒いけど服のまま寝ないといけないようなときには、エンビ服を外套がわりにかぶって寝ることもある。
もっとも、エンビ服を着て街のなかを歩くのには、ちょっとばかり勇気がいる。
演奏会場まで仲間三人でタクシーで行ったのはよかったが、帰りのタクシーがつかまらなくて、とうとう三人でエンビ服のまま市中をさまよったことがある。あげくのはてに、疲れ果てた風貌ですし屋のカウンターに三人並んだときは、さすがに場違いそのものであった。

 

■ 雨にも負けず、風にも負けず、ムカデの襲撃にも・・・

 「雨にも負けず、風にも負けず、ムカデの襲撃にも・・・」
何が怖かったといって練習中に手の上にムカデが落ちてきたときほど驚いたことはない。建物が老朽化していたからだろうが、天井からこともあろうに私の手の上に落ちてきたのだ。オーケストラの大音響を消してしまうくらいの大声を発したのはいうまでもない。
まあこんなことは珍事としても、野外の本番はしばしばいろんなことに悩まされる。
まず、雨。事務局の人はちょっとでも降ったら止めるというが、一滴でも降ったら特に我々の弦楽器は困るのである。だから一滴降る前に止めてほしいのだが・・・・・。
風にも悩まされる。譜面が飛ばされないように洗濯バサミのようなもので止めはするのだが、ちょっと油断すると客席まで譜面が飛んでいくこともあるし、ひどいときは譜面台ごと倒されてしまう。
川辺でのコンサートをすると蚊はもちろん、ウンカの大群が押し寄せることもある。また、夏は30度を超える暑さで楽器が剥がれないかと心配したり、冬の学校公演などでは寒くて弓を動かす手が風を切るたびに痛くて仕方がないということもある。もちろん左手などは細かく正確になど動くわけがない。
野外だけでなくコンサートホールでもいろんなことがある。
ライトがまぶしくて、目潰しみたいになって楽譜がぽっかり見えないことがあったりする。それとエアコンの音も神経が立っている演奏家にはつらいときもある。ましてやスタッフの話し声などが癇に障るときにはそばに行ってブンなぐってやろうかと思うこともある。
しかし、演奏家のこういう文句たらたらを聞かされる事務局の方はもっと本当は大変なのかもしれない。
「雨にも負けず、風にも負けず、演奏家の小言にも・・・・・」

 

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