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■ グノーのアヴェ・マリアの出生秘話?

Dr.トム:神戸市混声合唱団  太田 務

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 まるで清らかな小川のせせらぎのように流れ、春の木漏れ日のように暖かくつつみこんでくれるようなバッハの《前奏曲(プレリュード)》。このプレリュードがもととなった曲が、美しい独唱の旋律を伴って生まれ変わったグノーの聖母を讃える歌、アヴェ・マリアである事をご存知の方は多いと思います。それではこの回は、グノーのこの曲が出来上がるまでの、実はグノー一人ではこの曲は世に生まれなかった・・・、というお話しをしてみましょう。
 この曲は、ある音楽事典には1859年に出来上がったことになっています。またそれを遡る6年前の1853年に、バッハのこの《前奏曲》を利用した曲が2曲ほどグノーの作品リストに載っています。1つは器楽アンサンブルのための小曲、そしてもう1曲はフランスのラマルティーヌと言う、グノーと同じ時代を生きたロマン派詩人による詩の一節にメロディーを乗せたものでした。



<シャルル・フランソワ・グノー(1818‐1893)>
 

フランスの作曲家。オペラ「ファウスト」などでフランス歌劇を開拓。また十数曲のミサ曲をはじめ、宗教音楽の作品も多い

 さて、別の文献によると、どうも後者の作品、即ちおおよそ宗教的なものからかけ離れた詩を用いたものは、ある美しい声を持った既婚女性に捧げるつもりでグノーは編曲したようなのです。その女性の義理の母親は、ラマルティーヌの詩の内容を知り、そして義理の娘に対する彼の次第に優しくなる態度に危機感を感じました。(また、グノー自身も新婚だったのでした。)グノーにはそのつもりは無かったのかもしれませんが、その義母は何とかしなければと考え、ついに巧妙なアイデアをひねり出したのです。彼女はグノーの宗教心に訴えかけて、この世俗詩を聖母マリアへの祈祷文《アヴェ・マリア》と入れ替える事を提案したのでした。その案を受け入れ、出来上がったのが1859年に出版された、今日私たちが耳にする《グノーのアヴェ・マリア》である、と言う事です。

  一般的に「歌詞」が始めに存在し、そこに「旋律」が生まれるのが普通ですが、その逆も起こりえます。バッハ‐グノーのコラボ(共同作業)による《アヴェ・マリア》もその良い例です。生まれ方がどうであれ、美しい曲は美しい。美しい曲を私たちはどんどん楽しみたいものですね。

毎号、記事内に登場する名曲をご紹介します!

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アヴェ・マリア〜聖なる調べ
¥ 1,010

内容(「amazon」エディターレビューより)
“祈り”をテーマに、安らぎのための歌をセレクションした1枚。数多く存在する「アヴェ・マリア」、その中でも有名なシューベルト、グノー作や珍しいフィンランドの讃美歌など収録を収録。

 
収録曲:アヴェ・マリア(バッハ/グノー)/アヴェ・マリア(シューベルト)/アヴェ・ヴェルム・コルプス(モーツァルト)/他、全16曲


バッハ:主よ、人の望みの喜びよ(ピアノ曲集)
1,300

内容(「amazon」エディターレビューより)
衒いなくピアニスティックな響きを追求したバッハで、編曲もリストやブゾーニ版を使ったものも。ロマンティックで幾分硬質なワイセンベルグのピアノが、美しく響き渡る。

演奏:ワイセンベルク(アレクシス)  収録曲:コラール前奏曲「来たれ,異教徒の救い主よ」BWV659 / プレリュードとフーガ イ短調BWV543 /他、全10曲